テクの図鑑

vol.9 モータの小型化を推進する フェライトマグネットFB9

過去の記事を整理・一部リライトして再掲載したものです。 古い技術情報や、 現在、TDKで扱っていない製品情報なども含まれています。

モータの小型化を推進する フェライトマグネットFB9

 

現代社会を動かしているモータ。電力消費の半分以上が、モータによるともいわれている。 モータに欠かせないマグネット。その高性能化が進めば、省エネルギー化への貢献も大きいはずだ。 ランタン・コバルト系のフェライトマグネットFB9は、強力な磁気エネルギーをもち低温にも強い。

■ 結晶構造を制御

マグネットとは、ひと言でいうと、磁力線を出す素子である。DC(直流)モータでは、マグネットが出す磁力線を利用して、モータの回転子を動かしている。残留磁束密度(Br)と保磁力(HCJ)。これはマグネットの2大特性であり、この特性がよいほど、小さな体積で多くの磁力線を出すことができる。残留磁束密度とは、外部磁界によって磁性体を磁化したあとに、その磁界を取り除いても残る磁束密度のこと。保磁力とは、磁化をゼロにするために必要な磁界のことである。磁束密度は、単位面積あたりのN極からS極へ向かう磁気の流れをいう。  

残留磁束密度も保磁力も、磁性粒子から構成される微細構造と、その粒子を構成する結晶構造によって左右される。TDKのフェライトマグネットFBシリーズは、初代のFB1からFB6にいたるまで、おもに微細構造を制御することで磁気特性を向上させてきた。ところが1997年、TDKは、従来のM型Sr(ストロンチウム)フェライトに、La(ランタン)とCo(コバルト)を適量含有させる新組成を発見。飽和磁化と異方性磁場という基本物性をともに向上させることに成功したのだ。これがFB9開発の端緒となった。

■ ランタン・コバルトの添加

Srフェライトマグネットを高性能化する基本は、まず、フェライト粒子を1μm以下に微粒子化すること。それから、この微粒子を配向、すなわち1方向に整列させることである。TDKでは、微細原料を均一に混合して仮焼温度を低温化。これによって、一次粒子をサブミクロンサイズにまで微細化した。また、粉砕方法の工夫や低分子型の分散剤(界面活性剤)を用いることで、一次粒子の凝集を緩和し、配向度を高めている。  

こうした高度な製法によってつくられたSrフェライトをベースに、TDKは、さらに添加物の添加タイミングや焼成条件などの製造方法を工夫した。実は、ここにもう一つの技術がある。TDKは、LaCoを添加したSrフェライトでは、フェライト粒子内部に格子欠陥が発生しやすくなることを発見し、これを抑制する製造技術を開発した。その結果、飽和磁化と異方性磁場の増加をフルに活用できるようになり、大幅な高性能化を達成したのである。

■ 低温にも強い

 従来のFB6とFB9を比較してみよう。高保磁力タイプのFB6HとFB9Hをくらべると、残留磁束密度が7.5%アップ、保磁力は室温で11%アップ、-40℃で21%アップする。つまり、6極のDCモータ中では25%小さな体積で、同じ磁気エネルギーが得られる。モータの小型化、ハイパワー化、省エネ化を大きく推進できるのだ。しかもFB9は、フェライト磁石の弱点とされる低温減磁の問題も改善。-40℃の低温下においても、すぐれた信頼性を発揮する。フェライトマグネットは、もともと高温側では保磁力が増加するため高温減磁の心配がない。FB9の幅広い温度安定性は、自動車用モータに最適だ。  

激しいコストダウン競争の渦の中にある、フェライトマグネット市場。もちろんTDKでは、低コスト化でも先手を打とうとしている。また、次世代のフェライトマグネットの開発にも挑戦中だ。従来とはまったく異なる新しい結晶構造により、FB9よりもさらに数グレード先をいくハイパワーマグネットである。困難な課題もなお残されているが、その誕生も近そうだ。高性能、低コストで市場ニーズを引き付けるTDK、パワフルなマグネット展開に期待したい。

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