テクの図鑑

vol.7 静電気の攻撃をカットする 積層チップバリスタ

静電気の攻撃をカットする 積層チップバリスタ

バリスタの語源は、バリアブルレジスタ。抵抗値が変化するという意味である。 高い電圧が加わると、抵抗値が急減して電流を流すため、静電気対策に有効だ。 高集積化、低電圧化がもたらす耐ノイズ性の低下は、バリスタのニーズを拡大させている。

静電気から機器を保護

ドアのノブに触れた瞬間、バシッと感じる強いショック。乾燥した冬によく起こる現象だが、これは人体にたまった静電気の放電によるものだ。このような瞬間的に発生する異常に高い電圧をサージ電圧という。ごく短時間の放電ではあるが、人体から放電される静電気は、数kVという高い電圧をもつ。静電気によるサージは、電子機器の誤動作や半導体素子の破壊の原因となり、ESD(electro-static discharge:静電気放電)とよばれてその対策がクローズアップされている。

 バリスタは、印加電圧がある一定以上になると、電流が急に流れ出すという性質をもった素子である。バリスタの電圧制限機能により、静電気のような異常電圧から、電子機器の回路や半導体素子を保護してくれる。従来は半導体のツェナーダイオードを用いていたが、2素子が必要でコンデンサを外付けしなければならず、大きな実装面積を要した。バリスタを使用すれば、実装面積を2分の1以下にできる。しかも、大きな耐電圧をそなえているため、静電気のような過電圧に対してすぐれた電圧制限機能を発揮するのだ。

微粒子化かつ均一化

バリスタにはどうして電圧制限機能があるのか。それは結晶と結晶の境界、すなわち結晶粒界が抵抗として作用するからなのだ。電界が弱い場合、電子は結晶粒界が壁となって移動できず、電流が流れることはない。ところが電界を強くしていくと、やがて電子がその壁を飛び越える。いわゆる、トンネル効果として電流が流れるのである。バリスタは、このときの電圧が2Vと考えられている。バリスタ電圧が20Vなら、そのバリスタの結晶粒界は10個あるというわけだ。  

これまでのディスクタイプのバリスタ(50〜200V)にくらべ、積層チップバリスタでは低電圧(8〜12V)を実現した。ポイントは2つだ。ひとつは、内部電極間の薄層化。これによって、結晶粒界の数を減らした。もうひとつは、結晶粒径の微細化および均一化。結晶粒子にバラツキがあると、粒界が少ないところ、つまりバリスタ電圧が低いところから電流が流れ始める。そうなると、部分的に発熱して、破壊にいたってしまうからだ。TDKでは、独自のプラセオジウムZnO(希土類添加酸化亜鉛系)材料を採用し、高度な微細構造制御技術を駆使。サージ電圧を効果的に安定して吸収できる、高信頼・高耐久性のバリスタを可能にしている。

0603や低静電容量タイプも開発

高集積化が進む半導体素子。バリスタに対しても、小型化の強いニーズがよせられている。TDKでは、世界最小の0603(0.6×0.3mm)タイプを実現した。従来の1005(1.0×0.5mm)タイプにくらべて、体積比で約5分の1である。また、1素子に2素子分の機能をもたせるアレイタイプを製品化した。鉛フリーはんだ付けにも対応している。  

また、ICは、低電圧駆動がトレンドとなっている。これにともなって、従来よりも低い電圧で、サージ電流を流せるバリスタが求められているのだ。TDKでは、バリスタの積層構造をより薄層化することで、これに対応している。さらに、USB2.0のような高速信号ラインに適した、低静電容量タイプも製品化した。これは、高周波に対応するために、コンデンサ成分を抑制。この際、電極面積を縮小したときに問題となる、サージ耐量の低下と制限電圧の上昇を克服している。微細構造制御技術を武器に、業界が注目するラインアップの充実。さらなる強力製品の開発に向けて、ますますボルテージを上げている。

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