電気と磁気の?館

No.6 ハイブリッド車などにも利用される電気二重層キャパシタ

過去の記事を整理・一部リライトして再掲載したものです。 古い技術情報や、 現在、TDKで扱っていない製品情報なども含まれています。


コンデンサは抵抗、コイル(インダクタ)とともに3大受動部品と呼ばれます。携帯電話には米粒やゴマ粒よりも小さな積層セラミックチップコンデンサが数百個も使われています。電荷を蓄えるのがコンデンサの基本機能。一般的なアルミ電解コンデンサの100万倍以上の静電容量をもつ電気二重層キャパシタと呼ばれる特殊なコンデンサが、ハイブリッド車はじめ、さまざまな用途に応用されはじめています。

ボルタ電池に先立つコンデンサの発明

濃縮牛乳をコンデンス・ミルクというように、コンデンサはもともと“濃縮器”という意味ですが、電荷を蓄えるという働きから蓄電器と訳されています。コンデンサの命名者はイタリアのボルタです。有名なボルタ電池の発明(1800年)以前から、彼は“電気盆”の考案(1775年)により物理学会で注目を集めていました。
 電気盆とは静電気を発生させ、かつそれを持ち運べるようにした装置です。ある種の物質を摩擦すると静電気(摩擦電気)が発生することは古くから知られていました。下図Aに示すように、樹脂やロウといった絶縁体を毛皮でこすると、毛皮はプラス、絶縁体はマイナスに帯電します。マイナスに帯電した絶縁体に集電用の金属円板を接触させると、金属はプラス電気とマイナス電気に分極します(静電誘導)。このまま金属円板を離せば、プラスとマイナスは中和されて元の状態に戻ってしまいますが、ボルタは金属円板の表面(上側)を指で触れることにより、マイナス電気を除去する操作を取り入れました。人体を通じてマイナス電気を地面に放電(アース)するのです。マイナス電気が失われたため、金属円板に残るのはプラス電気です。

図A ボルタの電気盆のしくみ


 静電気が金属円板に残っていることを確かめるために、ボルタは金属円板を頭部に取り付けた特殊な箔検電器を製作しました(下図B)。金属表面はワニスの皮膜で絶縁されているため、ここにプラス電気を蓄えた集電板を接触させると、箔検電器側の金属円板はマイナス(上側)とプラス(下側)に分極します。ここでプラス電気を手でアースさせて逃がしてから集電板を離すと、箔検電器にはマイナス電気だけが残り、同種の電気の反発作用(クーロン力)で2枚の箔が広がります。この一連の操作を繰り返せば、箔検電器には静電気が濃縮(コンデンス)されていきます。このことは、2枚の箔の広がる角度がしだいに大きくなることによってわかります。電子部品としてのコンデンサは、絶縁体をはさんで金属電極を近接させるこの実験装置がルーツです。

 

図B ボルタのコンデンサ

■ 身近な材料でつくれる静電気振り子

 静電気を利用して振り子運動をさせる面白い理科実験があります。用意する材料は、アルミの空き缶、発泡スチロール板、プラスチックのストロー、鉄の画鋲、糸、ラップフィルム、台所用のゴム手袋などです。これらを下図Cのように組み立ててから、残りのアルミ缶1個にラップフィルムを巻きつけます。アルミ缶に静電気を帯電させるわけですが、摩擦する必要はありません。巻きつけたラップフィルムをいっきにはがすだけで、アルミ缶にはプラス電気が帯電します。このとき大切なのは、帯電した静電気が人体を伝わって逃げ出さないように、両手にゴム手袋をはめて絶縁しておくことです(直接アルミ缶に触らないように、木やプラスチックの棒などでくくりつけておいてもよい)。
 帯電したアルミ缶を下図Cのアルミ缶(右)に接触させると、プラス電気はアルミ缶(右)に放電されて帯電し、糸で吊るされた画鋲は静電誘導によりアルミ缶に引き付けられます。ところが画鋲がアルミ缶(右)に接触したとたん、画鋲もプラスに帯電するため、一転して同じプラス電気どうしの反発作用が働き、画鋲はもう片方のアルミ缶(左)のほうへ跳ね返されます。続いて画鋲がアルミ缶(左)に接触すると、プラス電気を放電して再びアルミ缶(右)に引きつけられます。この繰り返しによって画鋲は振り子運動を続けるのです。つまり画鋲はアルミ缶(右)に蓄えられた静電気をアルミ缶(左)に運ぶ小さな電気盆の役目を果たしているわけです。身近な材料を使って、小学生から大人まで楽しめる簡単な理科実験なので、ぜひ一度ためしてみてはいかがでしょうか。
 電子回路におけるコンデンサも、この静電振り子と同じような電荷の充電・放電が利用されています。最もわかりやすいのは交流を直流に変換する整流回路におけるコンデンサの働きです。ダイオードによって整流されたばかりの交流は、電圧レベルが波打った脈流です。ここにコンデンサを並列接続すると電荷が蓄えられ、電圧レベルが下がったときに電荷を放出するため、出力側ではほぼ平坦な直流電流が得られます。このため平滑用コンデンサと呼ばれます。ICを駆動させるための電子回路にもコンデンサは不可欠。コンデンサは瞬間的に充電と放電を繰り返すバッテリのような役割をしているのです。

図C 静電気振り子の実験

 

■ さまざまな応用への期待がふくらむ電気二重層キャパシタ

 木炭とアルミ箔、食塩水だけで簡単な電池がつくれます(下図D)。これは木炭電池と呼ばれ、理科実験としておなじみのもの。おもちゃなどに使われる小型DCモータを回すくらいのパワーは得られます。こんな簡単な材料で電池が実現するのは、木炭の表面に無数の小さな孔があり、実質的な表面積がきわめて大きいことによるもの。冷蔵庫の脱臭剤などに使われるのも、表面積が大きいため、吸着能力に著しくすぐれるからです。ありふれた素材ながら木炭はなかなか不思議な能力を秘めているのです。
 現在、EV(電気自動車)やHEV(ハイブリッド車)、FCEV(燃料電池車)といったモータ駆動の新世代カーの補助電源として、電気二重層キャパシタ(EDLC、下図E)と呼ばれるエネルギー貯蔵デバイスの利用が進められていますが、その電極にも活性炭が活躍しています(キャパシタとはコンデンサの別名)。
 一般に異なる物質を接触させると、電荷の移動により電気二重層と呼ばれる界面が生じて安定します。この現象を利用したのが電気二重層キャパシタで、すきまを隔てて置かれた1対の活性炭の電極を電解液で浸した構造となっています。この電極に電圧を加えると電解液のイオンが移動して、プラス側の電極にはマイナスイオン、マイナス側の電極にはプラスイオンがびっしりと並び、それに応じて電極には正電荷と負電荷が誘導され、電気二重層を形成します。こうして充電したのち、回路につなぐと蓄えられた電荷が放電されます。これはコンデンサの放電原理と同じです。
 コンデンサは電極の面積が広いほど、また電極間距離が狭いほど、静電容量が大きくなり、より多くの電荷を蓄えられます。活性炭には無数の小さな孔があり実質的な表面積はきわめて大きく、かつ電気二重層はきわめて薄い層なので、一般的なアルミ電解コンデンサ(μFオーダー)の100万倍以上(Fオーダー)もの静電容量をもたすことができます。しかも二次電池のように電気化学反応を利用するわけでもないので、充放電をいくら繰り返しても物質劣化がなく、鉛のような重金属を使わないので環境にもやさしいというメリットももっています。
 電気二重層キャパシタは、EVやHEV、FCEVの補助電源ばかりでなく、携帯電話やノートパソコンといったモバイル機器のメモリバックアップ電源、FAXやコピー機などのウォームアップ電源、UPS(無停電電源システム)、太陽電池パネルで発電した電力の貯蔵用など、広範な用途への応用展開が可能。原理も構造もシンプルながら、これから大きな期待が寄せられるエネルギー貯蔵デバイスです。

図D 木炭電池の実験


 

図E 電気二重層キャパシタ(EDLC)の基本原理

 

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