電気と磁気の?館

No.11 共振・共鳴現象とは?同調(共振)回路の仕組み

過去の記事を整理・一部リライトして再掲載したものです。 古い技術情報や、 現在、TDKで扱っていない製品情報なども含まれています。

音波は空気の振動、電波は電磁界の振動、地震波は大地の振動です。あらゆるものは固有振動数をもっていて、外部からの振動周期と合うと共振(共鳴)して振幅が大きく高まります。共振(共鳴)現象はやっかいな問題も引き起こしますが、楽器や機械、電気・電子回路、とりわけ電波を利用する無線機器などできわめて重要な役割をはたしています。

共振とは

まずは共振と大きく関わる固有振動を説明しましょう。物体に衝撃を加えると、物体はそれぞれ決まった固有の周波数(1秒間に繰り返す波の数)で振動します。これが固有振動で、この周波数を固有振動数といいます。物体ごとに固有振動数が決まっているので、どのような衝撃を加えても物体は固有振動数で振動します。
では、共振とはどのような現象でしょうか。物体の固有振動数と同じ周波数の振動を外部から受けると、静止していた物体が振動し始めます。これが共振です。
また、物体の固有振動数と同じ周波数の振動を繰り返し外部から加え続けると、振幅が増し、振動はどんどん大きくなります。このように、加えた力よりもはるかに大きく振動する現象も共振です。

連成振り子の共振によるエネルギーの授受

連成振り子とは、2つ以上の振り子がお互いに影響を及ぼし合う振動系のことです。水平に張ったワイヤーに、糸の長さとおもりの質量が等しい2つの振り子(振り子A、振り子B)を吊るします。振り子Aだけを振動させると、静止していた振り子Bが振動し始めます。振り子Aは徐々に減衰し、やがて止まります。この時、振り子Bの振幅は最大になっています。すると次は、静止した振り子Aが再び振動し始めて、振り子Bは徐々に減衰し、やがて止まる、これを交互に繰り返します。糸の長さが等しい振り子Aと振り子Bは、固有振動の周波数が一致しているので共振が起こり、このようにエネルギーの授受をするのです。

連成振り子

自然界は共振=共鳴現象であふれている

グラスハープ(glass harp)と呼ばれる楽器があります。といってもガラス製のハープ(竪琴)ではありません。ワイングラスやブランデーグラスのような足つきグラスの縁を指でこすり、摩擦の振動によって“ヒュ〜ン”という連続音を発する楽器らしからぬ楽器です。グラスに入れる水の量を加減することによりドレミファ…の音階をつくれるので、グラスをたくさん並べてメロディや和音を奏でることもできます。グラスに入れる水の量が多いほど、奏でる音は低くなります。グラスの振動だけでなく水の振動も関係しています。

共振で音が出るグラスハープ
噴水魚洗

中国で古くから伝わる“噴水魚洗”も、グラスハープと似た原理のもの。外見は2つの取っ手がついた中華鍋のような銅盆で、水を入れて取っ手を両方の手のひらで素早くこすり続けると、銅鍋はブンブンという音を発して水が振動を始め、やがて水面から水しぶきが噴き上がります。高く噴き上げるコツは、適量の水を入れることと、取っ手をこする手の動き。熟練者となると水しぶきの高さは1m近くにも達するそうです。

共振で水が噴き上がる噴水魚洗

重力に反して水が噴き上がるのは、銅盆の中の水の固有振動数と、摩擦による振動周期が一致して共振現象が起き、水の振動が定常波となるからです。定常波というのは波形が変わらない振動のこと。両端が固定されたギターの弦が一定の音を奏でるのも、両端を波の節とする定常波が生まれているからです(実際には整数倍の倍音も含みます)。定常波は波形が一定なので、供給されるエネルギーは振幅の増大に費やされます。噴水魚洗においては、人間の手の摩擦によって供給されるエネルギーが、定常波の振幅の増大をもたらし、水しぶきを噴き上げるのです。

共振=共鳴というのは、離れた場所にエネルギーを伝達する現象でもあります。たとえば共鳴箱に据えた音叉を鳴らすと、同じ大きさの共鳴箱に据えられた離れた音叉を鳴らします。こうした理科実験にかぎらず、自然界は共振=共鳴現象に満ちあふれています。「心の“琴線”に触れる」深い感動とか、「以心伝心」というのも、ある種の共振=共鳴現象なのかもしれません。

音叉と共鳴箱

共振は同調回路でも利用されている

共振はラジオやテレビ、携帯電話などの無線機器の同調回路においても利用されている現象です。

抵抗とともに3大受動電子部品であるコンデンサやコイルは、電流に対して正反対の性質を示します。2枚の電極が絶縁物をはさんで向き合う形状となっているコンデンサは、直流は流しませんが交流を流し、しかも交流の周波数が高くなるほど、リアクタンス(交流における抵抗)は小さくなって流しやすくなる性質があります。一方、コイルは周波数の低い交流は、直流のようにスムーズに流しますが、周波数が高くなるにつれ、リアクタンスは大きくなってだんだん流れにくくなります。

コイルとコンデンサの性質

この相反する性質をもつコンデンサとコイルを組み合わせると一定周波数の電波を選別する同調回路がつくれます。前号(本シリーズ第10回)でご紹介した鉱石ラジオは、同調回路を理解するうえで好適です。

鉱石ラジオの基本回路

鉱石ラジオとは、回路の一部に鉱物の結晶を用いた受信機であり、アンテナから拾った微弱な周波数の電波エネルギーをそのまま利用してイヤホンを鳴らすものです。

具体的には、鉱石ラジオのアンテナは、さまざまな周波数の電波をとらえ、検波回路(鉱石やダイオード)によって一定方向の交流電流を回路に流しています。しかし、これでは特定周波数の信号を選択できず、聴きたい放送局が聴けません。
そこで回路に並列または直列に、コンデンサとコイルを組み合わせた同調回路を挿入して、特定の周波数を取り出すことで、好みの放送局を聴けるようにしているのです。

ここでは並列タイプの同調回路を例にして仕組みを解説します。(※図:同調(共振)回路のしくみ(並列型)参照)

コンデンサとコイルは、周波数に対するインピーダンス(交流電流の流れにくさ:抵抗)が逆の性質を持ちます。
同調回路において、高い周波数の交流をコンデンサがアース側に逃がし、低い周波数の交流はコイルがアース側に逃します。
一方でこれら2つを並列にすると、それぞれが逃がしにくい中間の周波数のインピータンス(抵抗)が大きくなる現象が起きます。
これが共振現象で、この大きくなった山の頂点にあたる周波数(共振周波数)は、
インピーダンスが極端に高いため、アース側ではなく、イヤホン(出力)側に交流が流れるというわけです。
これを言い換えれば、イヤホン側には共振周波数の交流、つまり特定の周波数のみが通過することになり、聴きたい放送局を聴くことができます。これが同調回路の基本原理です。

同調回路の仕組み

同調回路の発明者は、コヒーラ検波器の発明者でもあるイギリスのオリバー・ロッジ(1898年)。

当時としては画期的なアイデアでした。というのも、初期の無線通信は、高圧の火花放電から発する電波を利用するもので、いろいろな周波数成分を含んでおり、無線局が増えると混信してしまうためです。
そこで一定の周波数による通信が求められるようになり、同調回路が発明されました。
携帯電話、無線LAN、UWB通信など、今日の無線通信のかぎりない発展も、このシンプルな同調回路からスタートしたのです。

高周波回路の共振現象とノイズ問題

ラジオやテレビで選局するためのダイヤルやボタンは、同調回路のコンデンサ(C)やコイル(L)の定数(キャパシタンスやインダクタンス)を変えることにより共振周波数を変えています。

同調回路は特定の周波数帯の信号を通過させたり遮断したりするLCフィルタ(ローパスフィルタ、ハイパスフィルタ、バンドパスフィルタ)と原理的に同じものです。たとえば信号ラインに直列にコイル、並列にコンデンサを挿入すると、高周波の信号をコイルで跳ね返すとともに、コンデンサでアースへと流し、信号電流だけを通過させるローパスフィルタとなります。

LCフィルタの基本原理

高周波領域のノイズを除去するため、LCフィルタはノイズフィルタとしても使われます。ただし、信号周波数がメガヘルツ、ギガヘルツへと高くなるにつれ、高周波ノイズの周波数領域と接近してくるため、ノイズフィルタには通常のLCフィルタよりもキレのよい(急峻な減衰特性をもつ)ものが求められます。

しかも、高周波回路では回路図には現れないコンデンサ成分(キャパシタンス)やコイル成分(インダクタンス)による共振現象があり、さまざまなやっかいな問題を引き起こします。たとえばわずかな配線のカーブもコイル成分をもち、また配線とアース間の静電容量がコンデンサとして作用します。そればかりでなく電子部品のリード線すらもコンデンサ成分やコイル成分をもちます。このため、高周波領域では共振現象を起こして同調回路やLCフィルタのように作用し、たとえばパルス状の矩形波(方形波)の形が崩れたり、クネクネとなまったりして、信号の伝送エラーを起こしたりします。その周波数のことを自己共振周波数(SRF)といいます。

コイルが持つ抵抗成分

このような問題が深刻化してきたのは、身の回りにデジタル機器が登場しはじめた1970年以降のこと。電子機器の高速化・高機能化・多機能化が進めば進むほど、高度なノイズ対策が求められるようになっています。

中でも、自らノイズの発生源とならないようなEMI(電磁妨害:Electro Magnetic Interference)対策と、たとえノイズにさらされても影響を受けないようなEMS(電磁妨害感受性:Electro Magnetic Susceptibility)対策が同時に要求されます。これをEMC(電磁環境両立性:Electromagnetic Compatibility)といいます。TDKは、最適なEMC対策部品の提供、先進シミュレーション技術の設計への反映、電波暗室によるEMC測定サービスなどにより、お客様のEMC対策を強力にサポートしています。

共振=共鳴現象というのは自然界の普遍的な現象。ときにはやっかいな問題も引き起こしますが、それを乗り越え、たくみに利用することで、エレクトロニクス社会は大きく進歩を遂げてきました。クォーツ(水晶発振子)を用いた発振回路、レーザ、MRI(磁気共鳴画像装置)なども共振現象を利用したシステムです。

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