マテリアリティ(初版社内案)に対する意見書 

デービット・シンプソン氏(David Simpson)

デービット・シンプソン氏 (David Simpson)
インタープラクシス・コンサルティング 
ディレクター 
(InterPraxis Consulting, Director, Consultant) 

デービット・シンプソン氏は、サステナビリティコンサルティング会社のディレクターとして、国際的に活躍し、過去には国際規格AA1000の開発に関わったほか、ISO26000やISO37001(贈収賄防止マネジメントシステム)等の策定にも携わっています。また、様々な業界における著名企業のサステナビリティ側面に関するサプライチェーンマネジメント監査の実施や、世界銀行、IFC(国際金融公社)等のプロジェクトへの参画、ビジネスと人権の指導原則の国連特別レポーター、カナダ政府の環境機関におけるアドバイザー等も務めています。 

特定プロセス

マテリアリティ決定プロセスでは、課題がどのように特定され、優先順位をつける際にどのように評価されたか、より高い透明性のある説明が求められます。 
系統的で透明性の高いアプローチは、プロセスそのものに対する信頼を築くとともに、TDKのレポーティングが同社の計画や業績についてで公正な姿を伝えていることを示すのに役立つでしょう。


マテリアリティ課題/トピック

今後TDKが特定のテーマにフォーカスし、それらを価値の創造や維持あるいは破壊と関連付け、この課題に対応するために何をしていくのか、明確な目標値および期限をもって示すことを期待します。また、マテリアリティの中でさらに優先順位づけをすることで、読者は取締役会および経営陣がこれらの課題のどこに重点を置いているかがよりよく理解でき、有益だと思います。 


・EX/DX 

EXおよびDXは同社の戦略に関するものであると見受けられます。重要課題は確実に、同社の戦略にリンクしたものであることから、何がTDKのEX/DX領域での戦略実行を促進するのか、または阻害するのかがより具体的にわかるとよいと思います。現在の案では、EXとDXが社内の取り組みと事業で行う取り組みで分けられ、別のカテゴリーで繰り返し表現されていますが、これは少々紛らわしいと思います。すべての課題は事業を通じて取り組むものであるため、この区別は妥当ではありません。TDKが環境に及ぼす最大の影響は、同社自身の社内的な環境パフォーマンスではなく、むしろ同社の影響が及ぶ他者(パートナー、顧客、プロジェクト開発者、等)の環境およびエネルギーパフォーマンスだと考えます。


・ガバナンスと内部統制

これは重要課題としてリストアップされるには興味深いトピックです。通常、ガバナンスと内部統制は組織の「配管」のひとつだと考えられており、問題なく機能していることが求められます。従って、重要課題として特定されたということは、しかるべき働きをしていない、あるいは改善の余地があることを示唆しています。 
「ガバナンスと内部統制」という表現だけでは領域が広範すぎるため、特定のテーマにフォーカスすることを期待します。 


・資産効率の向上

この項目は、TDKの株主にとって非常に重要な課題といえます。株主は、TDKがどのようにして資産効率を向上させ、そのために経営陣がどのような戦略を持っているかを確認したいと考えています。 


・人材マネジメント

才能ある人材を引きつけ、保持することに重点を置くことが必要です。従業員エンゲージメントまたは従業員満足度は、生産性に影響を及ぼすことが証明されていますので、マテリアリティに取り入れてはどうでしょうか。


・サプライチェーンマネジメント 

ステークホルダーの一人として、TDKのサプライチェーンマネジメントについて最も関心を持っています。これは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックによって、さまざまな製造業でサプライチェーンの多くが途絶えた現状からも、注目を浴びている課題です。ステークホルダーは、調達力とその仕組みに加えて、TDKの事業において重要な原材料についてサプライチェーンの強靭さ(レジリエンス)に関心があるとともに、それが1社のサプライヤーまたは1つの国に依存しているのかどうかについても興味を持っていると考えられます。 
今後、「グローバルでの調達力」の強化が何を意味するのかをより具体化し、新型コロナウイルス感染症がもたらす影響と、TDKの事業におけるよりレジリエントで多様なサプライチェーンの必要性について検討することを期待します。 


・リスクマネジメント/オポチュニティマネジメント

ここでいうリスクマネジメント/オポチュニティマネジメントは、例えば企業リスクマネジメントプログラムの導入など、リスクに対処するTDKの能力を強化することを意味するのか、あるいは市場でのリスクとオポチュニティを特定することでイノベーションを加速させることを意味するのか、現状の案だと不明確です。リスクマネジメント/オポチュニティマネジメントに関する課題を今後の報告でより詳細に説明してくれることを期待しています。 


・その他の重要事項になり得る項目

サプライチェーンのセキュリティ、知的財産の保護、評判マネジメント 、新興市場へのフォーカス、顧客満足へのフォーカス、データ/人権の保護 、特定の国への依存などの課題も検討事項としてあがってくる可能性があります。

TDKグループの経済成長、持続的な社会への結びつき

TDKマテリアリティで示されているEX(効率的なエネルギー利用、低炭素エネルギーへのフォーカス、その他の環境問題)、責任ある調達、優秀な人材などは、TDKがサステナブルな社会にどのように貢献できるかを示す主要な例であることは一目瞭然です。一方で、DX(デジタル化)の領域については諸刃の剣になり得ます。デジタル化は「社会の効率性」を推進する反面、経済が「ニューエコノミー」に移行するにつれて雇用に影響を及ぼすからです。TDKはこの領域を注意深く調査・分析して、労働者のニューエコノミーへの移行をいかに支援し、この移行に伴う社会的損害をどう軽減していくかを考える必要があります。 
そこでTDKにとって鍵となるのが「価値の創造」です。これは、同社のミッション、ビジョン、戦略と外部環境によって形成されるものです。価値創造を追求する過程もしくはその結果が、組織自身や社会全般に対しての貢献につながるほか、持続可能な開発目標(SDGs)への貢献に通じると考えます。

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