


濡れた手でもタッチ操作できる、超小型圧電スイッチの可能性
スマートフォンをはじめさまざまなデバイスで使われているタッチスイッチ。デザイン性に優れ、使い勝手がよく、急速に普及しています。しかし、水濡れや汗に弱く、手袋では操作できないなどの課題がありました。TDKが開発中の「PiezoTap™」は、圧電技術を応用した圧電スイッチで、タッチスイッチの可能性を広げます。
ボタンがないスイッチ「タッチスイッチ」の技術課題
タッチスイッチ(タッチセンサとも言われる)とは、人や物が接触することで動作するスイッチ(センサ)のことです。機械的なボタンに代わって、製品のデザイン性やユーザーの使いやすさを向上できるスイッチとして、大きな注目を集めています。
タッチスイッチは強い力を必要とせず、軽く触れるだけで動作するので、照明器具のスイッチや自動ドア、エレベーター等に採用されています。特に近年では、スマートフォンやタブレットにおいて、画面に触れるだけで作動する静電容量方式のタッチスイッチが普及しました。静電容量方式のタッチスイッチは、指先と検出部が近づくことによって発生する、静電容量の変化を検出してタッチした位置を把握するという仕組みです。
しかし、静電容量方式のタッチスイッチには大きな課題がありました。それは、水や汗に弱く、導電性をもった専用の手袋でないと操作ができないことです。一般的な手袋で操作すると、指と検出部の静電容量変化が捉えにくくなり、操作ができなくなります。また、水や汗が付着すると誤動作することもあります。小型のタッチスイッチは、ウェアラブルデバイスやアウトドア・水まわり製品などへの活用が期待されるため、それらの課題への対応が求められています。

圧電効果を利用した、超小型・薄型の圧電スイッチソリューション
タッチスイッチの手袋操作や水濡れでの誤動作防止などの課題を解決するのが、TDKが開発中の小型・高感度圧電スイッチ「PiezoTap™」です。PiezoTapは静電容量方式ではなく、圧電効果現象を利用した超小型・薄型の圧電スイッチです。タッチした押し込みで生じる微小変位を圧電素子によって電圧に変換する圧電効果を利用した押圧検知の仕組みのため、手袋装着時や水回り環境においても操作が可能となります。密閉された機器本体の内部にPiezoTapを設置することで、これまでタッチスイッチが搭載できなかった用途への展開が可能となり、プロダクトデザインの可能性を大きく広げます。
また、重さ0.046g、大きさ7x7x0.2mmという超小型・薄型設計も特長で、筐体の素材を問わず取り付けが可能です。筐体に穴を開けずに取り付けられ、小型のタッチスイッチを使用する製品において、デザインの自由度が大きく向上します。
屋外での使用が多いTWS(完全ワイヤレスイヤホン)や、スマートグラス、スマートウォッチなどのウェアラブルデバイス、冷蔵庫、調理家電、洗濯機、電動歯ブラシ、浴室用リモコンなどの水まわりで使われる製品、自動車のダッシュボードなど、多種多様な用途で活躍が期待されます。
圧電効果を利用したPiezoTap™の動作原理

圧電式 vs 静電容量式の誤動作発生状況の比較

●指、タッチパネル非対応手袋、タッチパネル対応手袋のそれぞれについて、手袋着用時や濡れた状態による誤動作の発生状況を比較
●操作結果の判定基準 OK:意図した操作が可能 NG:意図した操作に対して、誤動作が発生
(例:シングルタップの操作に対してロングタップと認識するなど)
画期的な圧電スイッチのこれからの大きな可能性

ピエゾ&プロテクションデバイスBG
ピエゾ商品開発部 開発1課
担当係長 田村 淳
PiezoTapは現在開発中の製品で、2023年より量産開始予定です。これからのPiezoTapについて、製品開発者のひとりであるピエゾ&プロテクションデバイスBGの田村淳担当係長は次のように話します。「PiezoTapは、TWSやスマートウォッチ、スマートグラスといったウェアラブルデバイス機器の小型化、防水設計だけではなく、冷蔵庫や洗濯機など家電製品のデザイン性向上への貢献も期待できます。また、現在は主に民生品向けへの開発を行っていますが、次のステップとして車載用ディスプレイやインパネ用スイッチといった製品分野への開発も進めていきたいと考えています」。
TDKは、圧電技術を応用したこれまでにない超小型圧電スイッチPiezoTapで、新たなプロダクトデザインやユーザーエクスペリエンスの可能性を広げます。
圧電スイッチ PiezoTap™
